山形県庄内地方では、「大黒様のお歳夜」という風習があります。12月9日、各家々で大黒様をおまつりし、大黒様へ供えるお膳を用意します。献立はその家々で受け継がれてきた内容で若干の違いはありますが、概ね、納豆汁、黒豆ご飯、豆腐の田楽、はりはり漬け、そしてなんと言っても欠かせないのがブリコ(子持ちのハタハタ)の田楽です。これに加えて、まっか大根という、二股に分かれた大根もお供えします。これらには、まめまめしく、健康であるようにということと、子孫繁栄や子宝への願いが込められています。お膳は、大黒様の掛け軸の前に、手前側が掛け軸に向かうように備えられます。





私が昨年暮らした庄内町立谷沢地区でも、各家々で大黒様のお膳をお供えしていました。こちらでは、納豆汁に、芋がらだけではなくドンゴイ(イタドリ)が入っていたのが印象的でした。立谷沢では、春に採ったドンゴイを糠と塩につけておき、冬の間の保存食として食べる風習があります。コリコリとした食感が美味しいドンゴイの塩漬けは、煮物や炒め物にしても最高に美味しいです。



昨年はハタハタが不良で、他の魚で代用したご家庭もあったと聞きます。毎年この日になると、商店街の魚屋さんから、ハタハタを焼く香ばしい香りが漂うのも、大黒様のお歳夜の風物詩となっています。

昨年取材させて頂いた、道子さんのお家の大黒様のお膳の味を、懐かしく思い出す夜でした。
