「きつねの燈火 ー勝画楼にまつわる記憶や想いから物語りを描くー」

















会期 2021年3月13日(土)〜2021年3月31日(水)
会場 ①旧亀井邸(宮城県塩竈市宮町 5-5)
展覧会概要
塩竈市杉村惇美術館が主催となり、若手アーティスト支援プログラムVoyageの過去出展作家2名ならびにJUNBIサポーター(美術館のボランティアスタッフ)と協働し、勝画楼のリサーチを実施。塩竈市の歴史的建造物である勝画楼に関わりのある方々への聞き取り調査を通じ、この場所が経験してきたその長い時間へと想いを馳せ、それぞれのメンバーが、陶芸、絵画、文章、サウンドレコーディングなどの手法による表現を試みる。それらの成果物を、塩竈市内の歴史的建造物等に展示し、展示会場を巡ることによって、新たな視点から塩竈の豊かな文化を体験してもらう。
関連イベント
勝画楼見学会&プロジェクトメンバーによる勝画楼調査報告会
2021年3月20日(土) 13:00-15:30 集合場所:鹽竈神社東参道入り口
主催:塩竈市杉村惇美術館 協力:志波彦神社・鹽竈神社、塩竈市教育委員会、NPOみなとしほがま、チルドレンズ・アート・ミュージアムしおがま実行委員会
作品概要
本作は、塩竃の歴史的建造物である「勝画楼」に関する取材の記録と、それをもとに
制作したドローイング、灯籠の試作品で構成される。時代の流れとともに役割が変化していった勝画楼を、取材でのインタビューなどをもとに、
(1)鹽竈神社の別当寺だった法蓮寺の「書院」
(2)仙台藩の歴代藩主の「御休所」
(3)明治天皇東北巡幸の際の「行在所」
(4)明治時代~昭和期に民間に引き渡されてからの「料亭」
(5)昭和初期~の体験談「子どもたちの遊び場」
という5つの視点に分け、各項目ごとの出来事から想像したワンシーンをドローイング
に起こした。
ドローイングは、市内の歴史・文化施設を回遊する街歩きイベントの際などに使う手
持ち提灯にプリントされることを想定し制作している。明かりが灯った状態がイメージで
きるように、今回は試作品として五角形の灯籠を制作し展示した。
コンセプト
勝画楼は年代の異なる2棟を接続した複合建築物で、鹽竈神社別当寺であった法蓮
寺の客殿に、18世紀中期に東向書院が増築され、現在の形になったと考えられている。
およそ240年の歴史のなかで幾たびかの存続の危機を経験しながらも、この場所に想
いを寄せてきた市民の方々の努力によってかろうじて保たれてきた。成立から現在に至
るまで様々に役割が変化している場所であるため、勝画楼を一言で説明するは難しいと
感じた。しかし、その変化は世の中の動きと共にあると捉えると、勝画楼の移り変わりを
知ることで感じられる部分があるのではないかと考えた。そこで本作では、伺ったお話
を元に、勝画楼の節目となるような出来事を項目に分け、その移り変わりそのものを可
視化した。
各題材について
取材では、勝画楼にまつわる記憶を持っておられる4名の市民の方にご協力頂き、勝
画楼がそこに暮らす人々にとってどのような場所として存在しているのかに焦点を当て
話を伺った。また、様々な形で勝画楼と関わってきた方々が、勝画楼に対してどのような
想いを抱いているのかや、どういった部分を知ってもらいたいかという点についても伺
った。法連寺の書院として始まったという歴史や、仙台藩・伊達家との繋がり、明治天皇
が東北巡幸の際に宿泊したという部分については、体験としてのお話を聞くことが不
可能なので、その点については文献などを参考にした。
狐のキャラクターと作品タイトルについて
作中では、人間ではなく狐を登場人物とした。これは、描かれているイメージは事実
そのものではなく、見聞きした話から作者が想像した創作であることが伝わるようにと
いう意図がある。作者は2018年の夏に塩竃での作品制作のために当地を取材して歩
いたが、その際、塩竃には狐に関する民話や、狐を神の使いとする稲荷神社が非常に
多いと感じた。70代前後の方からは、今ではほとんど見かけられなくなったが、昔は町
なかでも狐が出ることは珍しくなかったという話を聞いた。稲荷神社は、岬のように海に
せりだしている場所に多く見られた。勝画楼も、一森山東端のせりだした岬にあたる場
所にあり、さらに、狐が寝床にするにもちょうどよさそうな雑木林になっている。日常から
その存在が忘れられているような場所で、狐たちが在りし日の出来事を演じており、提
灯の明かり(狐火)につられて人々がその光景を覗き見るようなイメージから《きつねの
燈火》というタイトルにした。
取材にご協力下さった皆様
大和田庄冶さん(NPOみなとしほがま事務局長)、佐藤健太郎さん(NPO みなとしほが
まボランティアガイド)、藤日出子さん、大変貴重なお話を聞かせて頂き、誠にありがとうございました。
展覧会情報
塩竈市杉村惇美術館
https://sugimurajun.shiomo.jp/archives/7284
https://sugimurajun.shiomo.jp/archives/8421